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想いと技術で織り成す空間 Vol.1
計装事業で取り組んだ大掛かりなプロジェクトに関し、当時のメンバーがそのやりがいや困難だったことについて語ります。
プロジェクト概要
工事期間:
2017年1月5日~2019年7月31日
プロジェクト規模:
施主1社、設計業者6社、元請施工業者1社、サブコン(設備工事業者)12社、協力業者9社
東テクの役割:
元請けの建設会社の下で組織されている各サブコンの橋渡し的な役割として、システム構築および施工における全体的な管理を行う
受注の経緯:
計装事業
株式会社ホテルオークラを施主として、東京都港区に位置する日本を代表するホテル「The Okura Tokyo(オークラ東京)」の自動制御設備工事を東テクが一任される。2年半にわたり1階~地上41階/地下1階~地上17階/地下1階~2階の複数の工区を担当し、メインサーバー42台、自動制御盤204面、熱源廻り制御、空調機器225台の制御、ファンコイルユニット1,206台の制御を手掛けた。
参加メンバー
吉田 史生
2003年度入社
東京計装事業部
部長
今橋 慎
2014年度入社
東京計装事業部
課長
稲葉 憲久
2002年度入社
東京計装事業部
課長代理
01
プロジェクトにおける東テクの役割
吉田:このプロジェクトでは、東京都港区に位置し、日本を代表するホテルのひとつと評される「The Okura Tokyo(オークラ東京)」のリニューアルにおける、自動制御装置の納入工事を請け負わせていただきました。また同時に、ホテルに隣接し、現存する中では日本最古の私立美術館である「大倉集古館」の改修・増築工事も担当し、そちらの自動制御装置と中央監視も含めて、東テクが担当しました。これらのプロジェクトの中で東テクは、元請けの建設会社の下で組織されている各サブコンの橋渡し的な役割となり、システム構築および施工における全体的な管理を行って竣工まで携わっていました。
今橋:今回は大規模なリニューアルを行うプロジェクトだったので、空調設備・衛生設備・電気設備などのそれぞれのサブコンが12社も入っていました。このプロジェクトをスムーズに進めていくためにも「すべての業者とやり取りし、全工区を東テクが一貫して管理する」という体制をとることを各サブコンと交渉し、納得いただくように働きかけました。
稲葉:当初は元請けの建設会社からも「1社に任せられるのか」と不安の声が上がっていたようですが、本工事に関係していた別の企業からも「東テクなら、実績も対応力もあるから大丈夫」という後押しがあったみたいです。そういった後押しを裏切らないためにも、これだけの大規模なプロジェクトで難しさはありましたが、施主の先にいる宿泊者さまに快適な空間をご提供するために竣工まで全力で対応し続けていました。
プロジェクト全体の流れ
STEP 1
設計図の精査・検討
今回のプロジェクトの設計図を読み込み、自社施工範囲・他社施工範囲の精査や施工内容の整合性・妥当性に問題点はないか、検討を行う。
STEP 2
機器の選定、実行予算書の作成
メーカーや施工協力業者を選定し、それぞれと打ち合わせを行いながら機器の選定や具体的な施工方法を検討する。その後、見積書を取り寄せ、実行予算書を作成する。
STEP 3
現場に常駐しながら、具体的な施工図を作成
現場に常駐しながら、施主や設計管理者、サブコンと打ち合わせを進め、現場での施工に関わる各種資料を作成し、施工図(※1)の作図を行う。また施工協力業者の作業開始時期・作業期間などを決める。
※1:設計図の情報を基に、建築物を施工する過程で実際の施工現場の状況や施工情報が詳細に記載されている図面
STEP 4
施工管理を進め、試運転調整を行う
現場での進捗を確認し、工程に合わせて自社の施工を行う。工程・安全・品質・予算などの多岐にわたる観点で現場を管理する。施工終盤には自社が施工した機器の動作確認を行い、試運転や自主検査により、品質に問題がないことを確認する。
STEP 5
総合試運転を経て、竣工へ
全体的な総合試運転を行い、設計意図や打ち合わせした内容に沿っているかを確認する。自社完成検査を行うと共に、役所などの検査対応も行う。竣工した際には、実際に納入した機器や制御盤、図面、施工写真、検査報告書などをまとめてサブコンに提出する。
02
本プロジェクトならではの難しさ
吉田:今回はホテルという特性上、客室・チャペル・宴会場・レストラン・厨房・プールなど、使用用途が異なる空間だらけでした。たとえば、空調設備の制御においても、客室を利用する宿泊者と厨房を利用する料理人とでは、過ごし方も快適さの基準もまったく異なります。それぞれにとっての快適な過ごし方に応えるためにも、制御方法は多岐にわたって非常に難易度の高いプロジェクトだったと思います。また、「The Okura Tokyo」は外国人のお客さまも多く利用します。そのため「スイッチのタイプを海外の方でも使いやすいものへ変えませんか」であったり、「海外の方は日本人とは体感温度が異なるため、設定温度を大きく下げても結露しにくいような設備にしてはどうですか」など、お客さま目線でのさらなる提案を差し上げることも心掛けました。
今橋:私の中で印象的だったことは、大きなプロジェクトだからこそ関係者が非常に多く、空調サブコン4社以外に衛生サブコンと電気サブコンが4社ずつ従事しているという体制だったことで、それらの業者全体の思いをまとめることは一筋縄ではいかなかったです。それぞれの業者や工区でのやりたいことや思惑があって、それらを整理するだけでも一苦労でした。そのような状況でも、みんなが納得のいく方法・結論に導いていくことが私たちの役目だったといえると思います。説得には根気も必要で、難しいことではありましたが、東テク1社に任せるというお客さまの期待に応えたかったので、全力で向き合っていました。
稲葉:私は、最初に工事が始まった工区を担当していたので、東テクの施工品質の印象がここで決まる!というプレッシャーがありましたね。客室の見栄えや宿泊者の使い勝手にも関わるような空調機器用のリモコンの設置位置を数ミリ単位で調整するなど、細部にもこだわりました。また、快適なプライベート空間をつくるために“静けさ”の実現には、特に注力しました。空調機器の風の音が気にならないかであったり、バルブの動作音が聞こえないかなど、施工予定の空調機器メーカーの工場に実際に足を運びながら、運転音の試験をしたこともありました。
今橋:反対に、私は26階以上を担当していたので、プロジェクトの終盤に施工が始まりました。どんなプロジェクトでも、工期は後ろのフェーズになればなるほどデッドラインを意識しないといけません。施工中は、毎朝屋上から下の階にかけて現場をまわり、「ここは次の工程に影響するから、今すぐにやろう!」と判断して動き出すなど、竣工から逆算した優先順位付けを行っていました。
03
プロジェクトをやり切って確信できた「私たちへの信頼」
吉田:他の現場で、「The Okura Tokyo のプロジェクトを担当していた」と話をすると、「あそこまで大規模で重要度も高い物件を竣工させたのか!」と驚かれると同時に、自分に対する信頼も寄せていただけているな、と感じています。建物としての社会的な重要性が高いことはもちろんですが、施工の難しさも業界の中では有名だったようです。また当時は、東京オリンピックの影響もあって建設業界全体で人員不足が続いていました。そのような中、限られた人員でホテルのオープンに間に合わせるということを遂行できたプロジェクトだったこともあり、お客さまやサブコンからも「その経験があるなら安心だね」という言葉をいただけます。
稲葉:信頼されていると実感できることは嬉しいですよね。私が感じた影響力は、今回の多くの関係者の中に初めてお取引させていただいたサブコンがいたのですが、「The Okura Tokyo」の竣工後に「他の物件もぜひ東テクにお願いしたい」とご依頼があり、受注につながったことです。自分たちの現場の様子を見て、そのように信頼していただけたことが嬉しかったですし、自信にもなっています。
吉田:私も、プロジェクトの後に元請けの建設会社から「他の物件でも東テクに携わってほしい」と言われました。普段、私たちが仕事の中で直接的に向き合うのは建設会社の下にいるサブコンではありますが、その元請け会社からそんな言葉をかけてもらえるのは現場冥利に尽きます。
今橋:施工させていただいたのが、やはり日本を代表する「The Okura Tokyo」というホテルだったということも、やりがいにつながったと思います。オープンの際にはそうそうたる顔ぶれの方がご出席されていたり、米国大統領などをおもてなしする際にこのホテルが利用されているというニュースを見て、日本にとって、なくてはならない建物のひとつに携われたことは貴重な経験だったとあらためて感じました。
04
東テクで描く、それぞれの次なる挑戦
吉田:現在は、今回のプロジェクトの約2倍の規模である、東京駅八重洲の大型プロジェクトに携わっています。東京のシンボルを手掛けるという期待感と、「無事に竣工させなければ……」という責任感を持ち、3年後の竣工を目指して、日々奮闘しています。
今橋:私も吉田さんと同じ物件に携わっています。竣工が近づけば、50階建てビルの屋上からの眺めや部屋から見える東京駅の様子など、普段はあまり見ることのない景色を目にすることができるのは、とても楽しみです。ただ、竣工したから終わり、とはならないのが私たちの仕事でもあります。その建物が実際に使われるようになって初めて、「きちんと稼働しているか」が分かるからです。工事中も、工事が終わった後も東テクのことを信頼していただき、再び東テクへお声掛けいただけるような仕事をしていきたいです。
稲葉:私の目標は、吉田さんのように大きな現場を取り仕切るリーダーになることです。現場全体をさまざまな角度から見て判断することのできる立場を目指して、目の前の仕事に日々向き合っています。また、ひとつとして同じ物件は無いので、それぞれの物件で異なるお客さまのニーズに応えるために、毎回携わるメンバーががらりと変わるのも計装という分野の特徴だと思っています。そういった仕事だからこそ、社内外問わず多くの人とのコミュニケーションを大事にしながら、快適な空間づくりを目指していきたいです。
吉田:東テクが提供する空調設備は、人々が快適に過ごすために欠かせない設備です。こうした設備が正しく制御されて快適な空間があることが当たり前な世の中だからこそ、人々には気付かれにくい仕事ですが、きっとそれで良いんだと思います。私が計装を手掛けたショッピングセンターに家族で出かけて、妻も娘もごく普通にそこで買い物を楽しんでいる。そんな当たり前な様子を見ることができると、この仕事をやっていてよかった、と誇らしい気持ちになります。そのような、誰もが心地よく過ごせる空間を、これからもつくり続けていきたいです。