インタビュー

法政大学経営学部准教授 北田皓嗣氏インタビュー

サステナビリティを社内浸透させるためのカギ

当社は、マテリアリティの特定をはじめとして、近年ではTCFD提言への賛同やカーボンニュートラルを目指すGHG削減目標の設定などに取り組んできました。そこで、サステナビリティに関する取組みのさらなる推進に向けて、法政大学経営学部の北田皓嗣准教授に、最近のトレンドや当社の今後の課題などについて話を伺いました。

サステナビリティに関する最近のトレンドは何でしょうか?

私の研究しているサーキュラーエコノミーの分野で言えば、「リマニュファクチャリング(remanufacturing)※1」や「リファービッシュ(refurbish)※2」というのが最近注目を集めていますね。 例えば、ヨーロッパやアメリカの一部の州では「修理できる権利」という法制度が整備されつつあります。今までのスマートフォンは2年程で買い替えるというビジネスモデルが一般的だったと思いますが、Googleの新しいスマートフォンでは修理のためのマニュアルが公開され、修理に必要なパーツやツールを手に入れられるようになっています。これにより、誰もが町の修理屋さんを立ち上げられるようになったり、消費者個人でも修理が可能になるのです。このように製品の中身を修理・アップデートしながら持続的に使用することがトレンドであり、物を売るというビジネスモデルから、システムやサービスを売っていくというところにシフトしているのではないかと感じています。
※1 廃棄段階となった製品を回収し、部品の入替等により新品同様の品質で再度販売すること
※2 初期不良として返品された製品や中古品を整備することにより新品同様の品質で再度販売すること

サステナビリティ経営に取り組む企業の課題は何だと思いますか?

私が研究している分野の一つではあるのですが、サステナビリティの社内浸透が進んでいないことが多くの企業が抱えている課題だと思っています。日本人は外国人に比べて、一般的にサステナビリティへの関心が低いとされています。カタカナ言葉の弊害もあるのか、どこか他人事で受け身の姿勢が見られます。さらに企業における社内浸透は、ある程度進んでいる企業とそうでない企業との差が非常に大きくなっています。一部の先進的な企業は、比較的早い段階から企業戦略にサステナビリティのマテリアリティが上手に組み込まれており、その後のマネジメントの仕組みや報酬体系、業績評価、予算にまで反映されています。それにより、自然と事業活動の中にサステナビリティが組み込まれ、社内での浸透が進んでいるのだと思います。

社内浸透が進んでいないことによる問題点は何が挙げられますか?

サステナビリティに関わる情報開示は、多様なステークホルダーから期待され、特に株主や投資家からの期待が高まっています。そのため、どうしても「外部にとってわかりやすい」ことが重視され、サステナビリティをビジネスと関連づけて発信されています。一方で、社内では企業戦略やマネジメントの仕組みに反映できていないことや、社員の理解が深まっておらず、自分ゴト化できていないことも少なくないです。このような社内外でのギャップが生じることで、社員のモチベーションを下げてしまうことが危惧されています。

当社のこれまでのサステナビリティに関する取組みについてご意見をいただけますか? また、さらなる推進をしていくためには何が必要だと思いますか?

御社の事業分野や持っている技術などの特性はサステナビリティビジネスとしてかなり大きなポテンシャルを持っていると思います。そんな中で次のステップとしては、「スコープ4」としても議論がなされている「削減貢献量(Avoided Emissions)」を開示していくことが良いのではないでしょうか。ビルディングオートメーションや省エネサービスに携わり、まさに他社のGHG排出量削減に貢献するソリューションを提供している御社とは相性が良いと思います。さらに、それらをいかにブランディングしていくのかということも重要だと思います。多くの企業が投資家に向けてサステナビリティへの取組みを発信している中で、「ビルの総合的な省エネをするなら東テク」と認知されるような、商社として物を売るだけでなく、省エネなどに関するシステムやサービスを手掛けているというブランディングが確立できると良いのかもしれませんね。 また、非財務情報の数字を見ても男性育児休業などは推進出来ているように感じますが、女性管理職比率などはまだまだ低いので、業種的に難しい部分もあるかもしれませんが、より幅広い層で女性が活躍できると良いと思います。

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